SDGsの取り組み 2022年2月18日

横浜国立大学「障害者とともに考えるSDGsと共生社会」の質問に答えます:その1

横浜国立大学全学教育科目「障害者とともに考えるSDGsと共生社会」のオンライン講義後に、受講した学生さんから162件もの感想カードが寄せられました。

 

学生さんからの感想カードには、

弱視の人が主人公で描かれているテレビ番組をみていたので、今回の講義とつながった」

耳の不自由な人の中には字幕よりも手話の方が伝わりやすい人がいるのは驚いた」

「疑似体験ダイアログ・イン・ザ・ダークを文化祭でやると認知度が上がるのでは?」

 

など、たくさんの意見・感想がありました。その中でも、特に多かった6つの質問(今回は質問1〜3)について、共用品推進機構の森川氏、アドバイザーで弱視の芳賀氏に協力をいただき回答します。

(講義内容に関しては、2021年12月の横浜国立大学でオンライン講義「障害者とともに考えるSDGsと共生社会」をご覧ください)

 

Q1女性イラスト ◆質問1

視覚障害の方がスマートフォンの読み上げ機能を使うと話されていましたが、スマートフォンの画面やタッチする位置はどのようにわかるのですか。補助の人の力を借りるのでしょうか。

 イメージ画像:アイフォン

 

視覚障害の方のスマホ利用に、興味をもってくださりありがとうございます! とても不思議ですよね?以前のガラケーならボタンがくぼんでいるので分かりますが、スマホはどうするのでしょうか?

 

 

実は、音声読み上げアプリをオンにしたときのジェスチャーと、オフの時のジェスチャーは異なるのです。iPhoneの場合、設定メニューの中にアクセシビリティの項目があり、”VoiceOver”という音声読み上げアプリがあります。

画面のどこかでタッチすると選択されているメニューを読み上げ、1本指で右にスワイプすると次の項目に移動、実行したいときはダブルタップなど視覚に頼らなくても使えるようになります。ちょっとイメージしづらいかもしれないので、次の1分30秒ほどの動画、視覚障害者のスマホ活用方法、iPhoneでの読み上げ機能「VoiceOver」を参考にしてみてください

 

 

最近では、音声アシスト機能(Siri)を利用してスマホを使いこなす人も増えているようです。

アップル社では、開発初期段階から、様々な年齢、障害、国籍、人種の人たちに開発チームに入ってもらって、製品づくりをしています。

アメリカでは1986年、リハビリテーション法第508条という法律が制定。障害のある人が使えるように定められた基準を満たすハードウェア、ソフトウェア、システム、ウェブサービス等のICTしか、合衆国政府は購入することができないからです。

 

 

Q2男性イラスト ◆質問2

今回の講義は目に障がいがある人の話が多かったですが、聴覚に障がいがある人が必要としていることは何なのでしょうか?目が見えていれば町を歩くのはさほど問題ないのではと感じてしまいます。

イメージ画像:自転車の事故

 

聴覚障害など、いろいろな障害について考えることは素晴らしいです!確かに感覚の中で、約8割は視覚から情報入手をしているといわれますので、目が見えていれば問題なさそうですよね?

 

 

しかし、街の中の音を全部消した、またはもやーっとしか聞こえない状態を想像してみてください。車やバイクの音がない、後ろからくる自転車の音がない、人の話し声もないと、安全に歩けるでしょうか? 特に、緊急事態発生のサイレンも聞こえないため、命に関わる問題も起こりうるのです。

本講義で説明したとおり「障害について正しく知る」ことはとても重要です。国立病院機構東京医療センターと慶応大学のグループの「聴力の加齢性変化に関するデータベース」によると、男女とも40代から聴力低下が一気に顕在化するとされています。聞こえにくいと感じている人の話を聞いてみることをお勧めします。

また、2022年1月、聴覚障害者の暮らしやコミュニケーションなどを分かりやすくまとめた図鑑が発売されました。聞こえない、聞こえにくい世界を知るために、とても参考になる一冊です。

※『耳の不自由な人をよく知る本/合同出版』
https://www.godo-shuppan.co.jp/book/b595790.html

 

 

Q3女性イラスト ◆質問3

得た知識を自分のものにし、それを行動に起こせるようにしていきたい。もしよろしければ、学校現場でできる配慮、しなければならない配慮等ありましたら教えてください。

 イメージ画像:小学校の授業

 

今後、学校の教職員になる人にとっては、とても良い着眼点です。何かマニュアルなどはあるのでしょうか?

 

 

学校現場でやるべき配慮は、マニュアルがあるわけではありません。必要な配慮は障害の有無に限らず、生徒によって様々だからです。教科書ひとつでも、点字や拡大文字、タブレット、読み仮名を付けるなど、生徒1人1人が必要とする支援を先生がしっかり知ることが大切になります。

 

視覚障害のある芳賀さんから、大学でスペイン語を学んだときの経験を教えていただきました。

“私が大学の時、スペイン政府派遣の先生に指導を受けました。先生は私を障害者としてではなく一般の学生として扱いました。

まず「あなたは点字を使うの?普通の文字なの?」と聞かれました。普通の文字を使用すると答えたところ、読みやすい文字の大きさを自分で書くように言われたので、紙にサインペンで書きました。それで先生はだいたい何をすればいいかを理解されました。そのあとに、「必要な支援があれば、自分から遠慮せずにいつでも言いなさい。できることはやります。できないことは相談して決めます。」とおっしゃいました。

これらはまさに、国連の障害者権利条約「合理的配慮」と合致しています。障害当事者と学校とがよくコミュニケーションをとり、お互いに何ができて何ができないのかを明確にして「必要な支援をすり合わせる」ことに尽きると思います。”

 

ただし初めての指導する場合は、とまどうことも多いと思うので、共用品推進機構のWebを参考にしてみてください。子どもから大学生・社会人までの教育指導案をダウンロードすることができます。

※共用品推進機構:子供向け指導案
https://www.kyoyohin.org/ja/education/index.php

 

また、文部科学省で紹介している教師のためのコンテンツも参考になります。

初めて通級による指導を担当する教師のためのガイド

通級による指導を担当する皆さんへ
~「初めて通級による指導を担当する教師のためのガイド」の活用について~
(※独立行政法人国立特別支援教育総合研究所「NISE学びラボ」ウェブサイトへリンク)

 

続きの質問4〜6は、横浜国立大学「障害者とともに考えるSDGsと共生社会」の質問に答えます:その2をご覧ください。

 

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