SDGsの取り組み 2021年12月13日

横浜国立大学でオンライン講義「障害者とともに考えるSDGsと共生社会」

横浜国立大学全学教育科目「障害者とともに考えるSDGsと共生社会」の講義で、ゲストスピーカーを弊社専務取締役の渡辺慶子が務めました。

 

画面:講義中の高野先生と渡辺

 

横浜国立大学では、障害者等が積極的に参加・貢献できる共生社会の実現に向けて、貧困、医療、教育、ジェンダー、雇用、まちづくり等の多様な視点からSDGsの目標達成に向けた事例に触れながら、障害のある講師(担当の高野陽介先生は車イスユーザー)とともに考える講義を実施しています。

 

高野先生が、ブライトの障害者、高齢者、外国人などへ分かりやすく情報を伝える「情報ユニバーサルデザイン」に興味をもっていただいたことをきっかけに、ゲストスピーカーとして招待されました。講義は12月上旬から映像が配信され、受講生には「学生としてSDGs視点での障害者配慮は何ができるか?」講義から得た気づきを感想カードに記入いただきます。

※感想カードの内容は、UDレポート:横浜国立大学「障害者とともに考えるSDGsと共生社会」の質問に答えます:その1をご覧ください。

 

タイトル画面:障害者とともに考えるSDGsと共生社会

 

60分間のオンデマンド形式なので、飽きずに視聴できるようクイズや視覚障害当事者へのインタビュー、事例紹介を交えながら進めました。実際の講義の一部をレポートしていきます!

 

 

講義の様子1 クイズに挑戦

講義の冒頭では、身近なものを例題に、アクセシビリティについてクイズを出題。学生が実際に考える時間を設けました。

たとえば、こんなクイズです。「LINEのスタンプを利用すると、一部の誰かが困る可能性があります。スタンプで答えると、誰が?なぜ?困るのでしょう?」

 

講義画面:LINEスタンプは困る人がいる?

 

答えは、視覚に障害のある人が読み上げ機能を使えないからです。日本眼科医会によると、視覚障害者は推定164万人。誰も取り残されないためには、スタンプだけじゃなく、「了解」「ありがとう」などの言葉を入力するのがベターです。

 

 

講義の様子2 ユニバーサルデザインとは?

「ユニバーサルデザイン」という言葉を聞いたことはあっても、具体的に何を指すのか、説明できる人は少ないかもしれません。

そこで、講義では「ユニバーサルデザイン」と「バリアフリー」を比較。日常よく目にする風景を例に、分かりやすく説明しました。

 

講義画面:バリアフリーとユニバーサルデザイン

 

「バリアフリー」とは、障害がある人がバリア(障壁)で利用できない場合、後からでもバリアを取り除くこと。駅にある、階段昇降機やスロープ、点字ブロックなどを指します。

 

「ユニバーサルデザイン」は、障害の有無や年齢にかかわらず、多くの人が利用しやすいよう最初から設計されたもの。エレベーターや自動ドア、信号機を指します。

 

 

講義の様子3  SDGs取り組み事例

続いては、ブライトが手がけた事例を交え、SDGsの具体的な取り組みを紹介しました。

 

■事例1 全国銀行協会「高齢者とつくった金融教材」

講義画像:高齢者と作った金融教材

 

ブライトが高齢者向けの金融教材をつくるにあたり、目指したのは「高齢者にとって必要な情報」を伝えること。

 

当初の企画では「金融商品の解説」「資産運用のメリット」をメインにする予定でしたが、高齢者からは「税金対策など自分が得する内容がよい」「資産運用はリスクも伝えてほしい」という声が挙がりました。

 

講義画面:SDGsへ貢献する教材

 

そこで、高齢者の意見を反映した教材に改善。その他「色弱の方でも見分けやすい色使い」「冊子は環境に配慮した原材料を使う」など、合計6つのSDGs目標に貢献しました。

 

■事例2 成田国際空港「障害者と作ったヘルプストラップ」

講義画面:障害者と作ったヘルプストラップ

 

次に、外見からは分からなくても空港で援助が必要な方のためのヘルプストラップを制作した事例を紹介しました。本企画でポイントとなったのは「障害をもつ当事者の声を聞くこと」。

当初は「障害の状態を詳しく書ける、折りたたむカード」を企画していましたが、障害者モニター調査を実施すると「助けてほしいことだけを伝えたい」「荷物が多いから、ケースから取り出さないで使いたい」という意見が挙がりました。

 

講義画面:障害者からの意見を反映した支援ツール

 

当事者の意見を反映させ、必要なことだけを記入できるようシンプルに改善、かつケースから出さずに使える仕様にしました。

 

※詳しくは、制作実績ページ「障害当事者やUD有識者の意見を取り入れた成田空港ヘルプストラップ」をご覧ください。

 

 

講義の様子4 SDGsへ貢献するデジタルツール

全銀協ADR(銀行とトラブルになったときに裁判をせずに解決してくれる中立機関)では、年1回発行しているレポートを2021年からデジタル化しました。

スマホでも閲覧できるアクセシブルなPDFや視覚障害者のための音声データ、YouTubeで閲覧できる動画に展開。

 

講義画面:情報ツールのデジタル化

 

平等に情報を伝えることに加え、ペーパーレスによるエネルギーの削減によって、SDGs目標に貢献している事例です。

ただし、「冊子の方が見やすい」という高齢者が多いため、すベてをデジタル化するわけではありません。ポイントは「情報を必要としている人へ、受け取りやすい手段で、多くの人に平等に伝える」ことなのです。

 

 

講義の様子5 視覚障害者へのインタビュー

講義の終盤では、先天性弱視のある芳賀優子さんへのインタビュー動画を公開。普段どのようにして本を読んでいるのか実演してもらいました。弱視(ロービジョン)である芳賀さんは、本に顔を近づけて、15倍のルーペをかざします。

 

講義画面:視覚障害者へのインタビュー

 

また、まったく目が見えない方がどのように本を読むのかについても、3通りの方法をご紹介いただきました。

 

1 点字で読む

2 読み上げデータ(訓練を受けた話し手の朗読を聞く方法)

3 YouTubeでの朗読劇

 

「目が見えないと本が読めないのでは?」と思われがちですが、工夫次第でいろんな楽しみ方ができます。芳賀さんの著書『ゆうこさんのルーペ』もYouTubeで聴くことができます。

 

※参考:バリアフリー演劇結社ばっかりばっかり朗読劇
https://www.youtube.com/watch?v=MHoSSJn0ChM

 

 

講義画面:読書を楽しむ工夫

 

※芳賀さんの書籍は、UDレポート「絵本『ゆうこさんのルーペ』出版!―共生社会ってどのように創るのだろう?―」でも詳しく紹介しています。

 

 

講義の様子6 身近でできることを考える

大学生がSDGsや障害者のことを自分ごととして考えるきっかけも紹介。

 

講義画面:障害者の疑似体験

 

例えば、障害者の疑似体験。全盲の人の見え方を暗闇で体験できる「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」という世界的なエンターテイメントがあります

 

講義画像:好きなこと、得意なことから

 

また、渡辺のボランティア体験「スペシャルオリンピックス日本」知的に障害のあるアスリートの活動で4年に1度世界大会が実施され、SDGsでは8つの目標に密接に関係しています。

「知的障害のある子どもは、読み書きが十分にできないのでは?」という偏見が払拭された経験を明かし、まずは自分が好きなこと、興味あることから行動してみることの大切さを伝えました。

 

 

講義の様子7 就活時にチェック!ユニバーサルデザイン推進企業

就職活動をする際に、SDGsやユニバーサルデザインの観点から先進的な企業を見つける選択肢があることを紹介。

 

講義画面:SDGsやユニバーサルデザイン推進企業

 

たとえば、SDGsやユニバーサルデザインを推進している企業「日本理化学工業」は、2010年に内閣府のバリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰を受けています。

 

同社は、全社員88人のうち63人に知的障害があり、SDGs目標8・10に大きく貢献。そのほか、ホタテの貝殻を再利用したチョークや、お米のワックスを使ったクレヨン「キットパス」を生み出し、人や環境に優しい「皆働社会」を目指す企業です。

 

UDレポート「3世代でらくがきを観覧車で楽しむ♪」では、キットパスを使ったイベントについて詳しくレポートしています。

 

 

おわりに

最後に芳賀さんが教えてくれた、今回のテーマ「SDGs」を考えるうえで大切なこと、3つのポイントをまとめとして講義を終えました。

 

1 情報を正しく知ること

2 得た知識を自分なりに消化する

3 身近なところから行動する

 

まずは、情報を正しく知ること。『誰かが言っていたから』『ネットに書いてあるから』ではなくて、事実に基づいた知識をつけましょう。

次に、得た知識を自分なりに消化すること。周囲の人に話したり、違う分野の方と話したりして、知識を自分のものにすることが大切です。

そして最後に、小さいことでも、身近なところから行動の一歩を踏み出してみることです。

 

顔写真:ブライト渡辺慶子 ゲストスピーカー:渡辺慶子(株式会社ブライト 専務取締役)

「江戸川区バリアフリーマップ」を行政、障害者団体と連携しながら作成したことがきっかけで、ユニバーサルデザイン事業を展開。

フジテレビや各種新聞で「高齢者・障害者に分かりやすい伝え方」を解説。その他、NTTグループ、北海道ガス、アクセシブルデザイン推進協議会など講演多数。

スペシャルオリンピックスでは、2007年の夏季世界⼤会(上海)・ 体操競技⽇本代表コーチを務める。

 

▼関連UDレポート

横浜国立大学でオンライン講義「障害者とともに考えるSDGsと共生社会」(今読んでいる記事)

横浜国立大学「障害者とともに考えるSDGsと共生社会」の質問に答えます:その1

横浜国立大学「障害者とともに考えるSDGsと共生社会」の質問に答えます:その2

 

 

ここがUD

「SDGs」「共生社会」と聞くと、自分とは遠い話に思えてしまいます。しかし、身近なところでも、人や環境に貢献することができるのです。
本講義を通じて「SDGs」「共生社会」を身近に感じ、興味関心をもってほしい。そして、ひとりでも多くの学生にとって、自分の働き方、ひいては生き方について今一度考えるきっかけとなっていれば嬉しいです。