合理的配慮ってなに?【改正障害者差別解消法が今年4月に施行】
今年4月1日に「改正障害者差別解消法」が施行され、事業者による障害者への「合理的配慮の提供」が義務化されます。
では、私たち事業者は具体的にどのようなことに気をつけていけばよいのでしょうか?そもそも、障害者差別解消法とは、合理的配慮とはどういったものなのでしょうか。
(文・イラスト:南條)
▼はじめに、「障害者差別解消法」と「合理的配慮」ってなに?
障害者差別解消法とは、障害者への差別をなくすことで障害のある人もない人も共に生きる社会を作ることを目指して2016年4月に制定された法律です。
この法律では、下記の2つのことが禁止されています。
①障害を理由とする「不当な差別的取扱い」 ②障害者から申出があった場合に「合理的配慮」を提供しないこと |
それぞれを以下に説明します。
①不当な差別的取扱い
例えば「障害がある」という理由だけでアパートを貸さないこと、入店を断ること、スポーツクラブに入会させないことなどを「不当な差別的取扱い」と呼びます。
障害のない人と異なる対応を取ることで、障害のある人が不利にならないようにしなければなりません。
②合理的配慮の提供
障害のない人は簡単に利用できても、障害のある人にとっては利用が難しい場合があります。このような場合、障害者の活動を制限しているバリアを取り除く必要があります。
障害者からバリアを取り除くために対応が求められたときには、事業者や行政機関等は負担が重すぎない範囲で対応することが定められています。これを「合理的配慮の提供」と呼びます。
以下は合理的配慮の具体例です。
<事例1- 飲食店にて> 【障害者からの申出】飲食店で車椅子のまま着席したい。 【合理的配慮の提供】机に備え付けの椅子を片付けて、車椅子のまま着席できるスペースを確保した。 |
<事例2- セミナーにて> 【障害者からの申出】文字の読み書きに時間がかかるため、セミナーへ参加中にホワイトボードを最後まで書き写すことができない。 【合理的配慮の提供】書き写す代わりに、デジタルカメラ、スマートフォンなどで、ホワイトボードを撮影できることとした。 |
いかがでしょうか。「配慮と言われても一体どうすればいいのか」と身構えてしまいがちですが、具体例を挙げると、お互いの立場に立って対話を行い、小さな工夫を重ねていくことが大切であることが見えてくると思います。
お互いにとって”負担が重すぎない”=”合理的”な”配慮”、ということですね。
▼行政機関と事業者での違い
さて、今回の施行のポイントとなるこの「合理的配慮の提供」ですが、これまで行政機関と事業者(店・会社)では少し扱いが異なりました。と言うのも「合理的配慮の提供」は、行政では義務とされていましたが、事業者では”努力義務”となっていたのです。
【改正前】
行政機関等 | 事業者 | |
不当な差別的取扱い | 禁止 | 禁止 |
合理的配慮の提供 | 義務 | 努力義務 |
※「不当な差別的取扱い」は行政、事業者ともに禁止されています
この扱いの違いが、今回の「改正障害者差別解消法」施行により4月より変わります。事業者による合理的配慮の提供が、従来の努力義務から義務に変更されたのです。
【改正後】
行政機関等 | 事業者 | |
不当な差別的取扱い | 禁止 | 禁止 |
合理的配慮の提供 | 義務 | 義務 |
これにより今後、各企業における合理的配慮への一層の対応が期待されています。
さて、なんとなく今回の改正の大きな流れが見えてきたかと思います。次の記事では配慮が必要な方とはどのような方々で、どのような特徴を持っており、どのような合理的配慮が必要となるのか、について解説していきたいと思います。