障害について知る 2021年8月3日

『共⽣社会の教養』その1:障害のある⼈が交通機関で嬉しかった出来事は?

差別や偏見がなく、誰もが暮らしやすい社会をつくるためには、多くの人が「共生社会の教養」を身につける必要があります。
そこで「共生社会」を実現するためのヒントが詰まった本、『共生社会の教養~プラスのコミュニケーションですべての人が暮らしやすい社会をつくる』が出版されました。

1 学ぼう!共生社会の実現に必要なこと

『共⽣社会の教養』はブライトが2007年から賛助会員として活動する共用品推進機構の専務理事、星川安之氏が執筆し、日本作業療法士協会理事である小林毅氏が法令に関する章を監修しました。

 

書籍表紙「共生社会の教養」

 

A5版、192ページとなかなかのボリュームですが、イラストが豊富だったり、各章に確認テストが用意されていたりと、読みやすい1冊になっています。

 

 

イラスト:3人の議論を遠くから見ている青年

 

本書でキーワードとなるのは「気づく」「知る」「考える」「行動する」の4つ。

1.あなたの周りで不便さを抱える人に「気づく」こと。

2.不便を感じている事柄やニーズを「知る」こと。

3.不便の解消、ニーズの実現には何が必要か「考える」こと。

4.不便を解消し、ニーズを実現するために「行動する」こと。

 

文中で紹介している事例を読み解きつつ、これら4つのキーワードを意識すると、「思い込み」や「無関心」という課題の解決に一歩近づくでしょう。

 

2 良かったこと調査〜公共交通機関編〜

本書では、障害のある人が公共交通機関を利用した際に、「良かったと感じたこと」を紹介しています。内容の一部をご紹介しましょう。

はじめに、空港や機内での嬉しかった出来事です。

イメージ画像:空港でスーツケースを引くキャビンアテンド2名

 

◆⾶⾏機で良かったと感じたこと

障害のある人の声 主な障害 年齢 性別
係員が白杖を見て、階段のない近道のルートを案内してくれた。

 

飛行機搭乗カウンターでの筆談対応。機内ではCAから出発時に挨拶やパイロットや気候の情報のメモをくれた。 ろう
CAさんが自分の手を見て、スーツケースを棚に乗せてくれてうれしかった。 肢体不自由(両肢)

 

 

次に、電車の構内で感じた良かった事です。

イメージ画像:駅の電光掲示板

 

◆電車で良かったと感じたこと

障害のある人の声 主な障害 年齢 性別
迷っていたら、白杖を持っていることに気づいた駅員さんが親切に案内してくれた。 弱視 70代 男性
電話して予約しておくと、車椅子を押してもらえるので助かります。 下肢障害 60代 女性
電光掲示板による文字や字幕表示が増えたこと。 難聴・中途失聴 60代 男性

 

 

次は、バスの乗車時や車内での嬉しかったことです。

イメージ画像:バスの座席

 

◆バスで良かったと感じたこと

障害のある人の声 主な障害 年齢 性別
空席に案内してくれたり、バスカードの残金を教えてくれる。 全盲 50代 女性
バスのステップを上がる時に、後ろから優しく押してくれる人がいる。 下肢障害
筆談してもらえた。 ろう 70代 男性

 

 

最後に、タクシーに乗ったときの嬉しかった出来事です。

イメージ画像:ハンドルを握るタクシードライバー

 

◆タクシーで良かったと感じたこと

障害のある人の声 主な障害 年齢 性別
車椅子の収納や乗り降りの安全を見守ってくれる 弱視、上肢障害 30代 男性
運転手の人が、外まで出てくれて、乗降を手伝ってくれた。 難聴 50代 女性
乗り込む時に「ゆっくりでいいですよ」と、声をかけてくれる。 下肢障害 60代 女性

 

 

これらは、障害のある方が実際に体験した「生の声」です。

「知らなかった!」「これなら私にもできそう」など、さまざまな感想を持ったのではないでしょうか。情景を思い浮かべながら読むと、より多くの気づきを得られるかもしれません。

 

3 外見からは気付きにくい障害をサポート〜ブライトの事例から

交通機関の職員や、一般の方からのサポートを受け、障害があっても快適に外出できる方が増えています。一方で、外見からでは障害があることがわかならい方はどうでしょうか。

発達障害や聴覚障害のある方は、都度自分の障害について説明し、援助が必要な旨を申し出なければならず、不便を感じているケースもあるようです。

そんな問題を解決するアイテム、「ヘルプストラップ」「コミュニケーション支援ボード」をご存知でしょうか?ブライトが制作した事例を2つご紹介します。

 

■制作事例1:ヘルプストラップ(成⽥国際空港)

写真:ヘルプストラップを首から下げた男性

障害当事者やユニバーサルデザイン有識者からの意見を取り入れ、外見からは分からなくても空港で援助が必要な方のためのカードを作成しました。

ヘルプストラップの表面とウラ面

 

利用方法


(1)成田空港内の案内カウンターにて、ストラップを受け取る。

(2)カードの裏面に「スタッフに知ってほしいこと」「手伝ってほしいこと」を記入し、着用。

※カードは、成田空港公式サイトから事前にダウンロードもできます。

(3)手伝いや案内が必要な際は、裏面をスタッフに提示。


また、「自治体で発行しているヘルプカードも使えるようにしてほしい」などの要望から共通サイズのカードが入るストラップ形式にしました。

 

詳しくは制作実績ページ「障害当事者やUD有識者の意見を取り入れた成田空港ヘルプストラップ」をご覧ください。

https://bright3.jp/post_works/naa_strap/

 

 

■制作事例2:コミュニケーション⽀援ボード(交通エコロジー・モビリティ財団)

コミュニケーション支援ボートとは、話し言葉でのコミュニケーションが困難だったり、日本語が分からない外国人とのコミュニケーションを手助けするためのものです。

 

表紙:コミュニケーション支援ボード

 

「言葉で説明できない」「上手く伝えられない」といったときに、コミュニケーション支援ボードの絵記号を指差して伝え合います。日本では、駅の案内カウンターやバスの運転席に導入され、知的障害、発達障害、聴覚障害や高齢者、日本語のわからない外国人等、様々な場面で活用が進んでいます。

 

コミュニケーション支援ボード

 

バス業界などから追加制作の要望が多く、累計約17,000部を配布していますが、配布モニター調査を実施したところ、「タブレットでも使えるツールが欲しい」「他言語対応してほしい」といった声が挙がりました。

そのため、現在も都度内容を改訂しながら展開しており、デジタル版ではタイ語やポルトガル語、ヒンディー語などを含めた19言語に対応しています。

 

詳しくは制作実績ページ「JIS T0103絵記号を活用、多言語支援ボード」をご覧ください。

https://bright3.jp/post_works/ecomoboad/

 

【関連ブログ 共生社会の教養シリーズ】

『共生社会の教養』その1:障害のある人が交通機関で嬉しかった出来事は?(今読んでいる記事)

『共⽣社会の教養』その2:会議のとき障害のある⼈に配慮する点は?

 

画像:投稿者白石さんの顔写真 投稿者:白石果林
法政大学 現代福祉学部卒業。学校法人・一般企業にて8年間勤務したのち、フリーランスライターとして独立。福祉、資産運用、不動産、健康、エンタメなど、幅広い分野で取材・執筆を行う。
ここがUD

「共生社会の実現」と聞くと、大きなアクションが必要なのでは?と思えてしまいますよね。しかし、「障害のある方が何を不便に感じているか」「どんな援助があれば助かるのか」を考えるだけでも良いのです。
ただし、必要なサポートは、人や場所、時間や季節によって異なります。まずは、相手の望みを知ること。そんな大切なポイントを、この本から教わりましょう。