SDGsに貢献:交通事故被害者のために冊子をペーパーレス化
SDGsの観点からペーパーレスが推進されていますが、一方、配布物を減らすことで普及啓発が滞り、情報が行き渡らないという課題もあります。
そこで、ペーパーレス推進の好事例からヒントにつながるポイントを紹介します。
交通事故による死傷者数は年間約37万人(警察庁2020年)と深刻な状況です。交通事故は突然の出来事で、 どうしたらよいのか戸惑うことばかりです。
そこで日本損害保険協会では、交通事故の被害者の方に最低限知っておいていただきたいポイントを冊子にまとめ情報提供しています。
2021年度版からは、SDGsの観点から冊子の発行部数を減らし、Webや動画での情報提供を開始しました。
SDGsへの貢献 | 2021年度版の取り組み | |
1.段階的なペーパーレス化
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●冊子の発行部数を約40%削減
●環境に配慮したFSC認証紙を使用 |
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2.伝達手段の多様化
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●特設サイト(パソコンおよびスマホ)
●動画(パソコンおよびスマホ) |
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3.情報弱者への配慮
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●色弱者にも区別しやすい色使い
●視覚障害者にも有効なしおり付きPDF ●JIS X 8341-3:2016基準のWeb機能 |
1.段階的なペーパーレス化
2021年度は、発行部数を約40%削減。ペーパーレスを段階的に実行しています。
なぜなら、パソコンが苦手な方や高齢者など、冊子で読みたいというニーズは一定数います。大事なのは、情報を必要としている人に、最適な方法で届けること。
本冊子も、国土交通省、消費生活センター、損害保険各社、日弁連交通事故相談センターや自動車事故対策機構などの関係団体を通じて配布され、有効活用されています。
なお、冊子の用紙は、環境に配慮されたFSC認証を受けています。FSC認証は、林業で働く人の人権を尊重するなどSDGsの1〜8、12〜17の合計14の目標に対して貢献しているのです。
2.伝達手段の多様化
金融庁の視覚障害者への対応状況アンケート(2020年3月)では、点字に代わる措置を整備している損害保険会社の割合は27.3%と課題があることが指摘されています。
SDGs3.6「すべての人に健康と福祉を:世界の道路交通事故による死傷者を半減させる」という目標達成のためには、誰一人取り残されないよう、情報の伝達手段に配慮する必要があります。
そこで、2021年度は、障害の有無に関わらずアクセスしやすい特設サイトを制作。パソコンで見てもスマホでも見ても分かりやすく、操作しやすい構成です。
加えて、「交通事故にあったら?落ち着いて5つの行動を」と題した動画を制作。1分45秒ほどで、事故にあったらまずどうするかを分かりやすく解説しています。
動画は、スマホでも見やすく設計されており、いつどこでも視聴できます。また、字幕付きのため、音声が出せない環境や聴覚障害者への配慮としても有効です。
※詳しくは、特設サイト「交通事故被害者のために」をご参照ください。
3.情報弱者への配慮
本冊子は、色弱者(色の区別が苦手な人)のためにカラーユニバーサルデザイン検証を行い、マークを取得しています。色弱者は日本に320万人以上いると言われ、SDGs10「人や国の不平等をなくそう」という観点からも、正しく情報が伝わる配慮として最適です。
みなさんは、PDFに「しおり機能」があるのをご存知ですか?冊子でいうと「目次」のような役割で、左側のメニューからダイレクトに読みたいページへ飛ぶことができます。
視覚障害者はページ数が多いPDFでは、迷子になってしまうこともあるので「しおり機能」はとても有効な機能です。
「しおり機能」が表示されない方は、左上にある「しおりマーク」をクリックすると表示されます。
また、特設サイトは、JIS X 8341-3:2016のうち、特に重要な基準の機能を搭載しています。
(一例)
● 視覚障害者が利⽤するPC-talkerや Microsoft Edgeなどの「⾳声読み上げ」に対応 ● 全盲の⽅はマウス操作ができないため「全ての操作をキーボードで⾏える」よう配慮 ● 図やイラストは⾳声で読み上げないため「alt属性」機能で補⾜ ● ⽩⿊反転の⽅が⾒やすい弱視の方向けに「⽂字の拡⼤」や「⽩⿊反転」機能に対応 |
このように、ペーパーレスを推進するにあたっては、「情報弱者」と呼ばれる、高齢者、障害者、外国人などへも等しく情報が伝わるよう留意し、誰一人取り残されないような配慮が必要なのです。
・ペーパーレスの推進は、今まで紙がバリアだった視覚障害者にとってもメリットが大きい
・すべてをデジタル化にするのではなく、対象者に合わせて段階的に取り組んでいくことが重要