ユニバーサルデザイン 2024年10月4日

世界一の公共図書館のコンセプトは”本の天国”!フィンランド・ヘルシンキ旅行記

9月中旬、フィンランドへ行ってまいりました(個人的には初めての海外旅行です)。

 

九州では35度を超える暑さというニュースも聞きましたが、フィンランドは15度前後。長袖にカーディガン、アウターを着込むほどの冷え込み。

 

ヘルシンキ大聖堂。中央がドーム状になっている白い建物

フィンランドを象徴するヘルシンキ大聖堂はあいにく一部修繕中でしたが、大迫力です

 

1週間ほど現地に滞在しましたが、今回はその中でも印象的だった「ヘルシンキ中央図書館」について、ユニバーサルデザインの目線も交えて書こうと思います。

”世界一の公共図書館”に選ばれた図書館

ヘルシンキ中央図書館(通称Oodi)は2018年12月にオープンし、翌2019年には「2019年公共図書館アワード(2019 Public Library of the Year Award)」を受賞しています。

 

図書館の外観写真

波打つような外観もすてきです

 

1階にはレストランや映画館、2階には音楽スタジオやキッチンなど様々なクリエイティブスペース、3階には10万冊の蔵書や学習スペースが並ぶなど、図書館の枠に収まらない複合施設です。羨ましい…

 

では中の様子を見てみましょう。

 

図書館の内観。天井の高いひらけたスペースに本棚や座る場所、机が所々に置かれている

この開放感!

 

Oodiの設計には橋を作るような構造を用いているそうで、館内には柱がありません。広々とした空間には、平日にも限らず多くの老若男女が溢れていました。

 

球体に近く、座面がくり抜かれている白い椅子に座る図書館利用者

(おそらく)エーロ・アールニオ作のBall Chairに座る人々

 

さすがはデザイン大国。そこかしこにフィンランドで設計されたスツールなどが置かれています。

 

図書館の案内表示。よく見ると3ヶ国語表記になっています

 

案内サインもスッキリとわかりやすいですね。

フィンランドではフィンランド語・スウェーデン語が公用語として使われており、公共施設では上記2言語と英語の計3言語が併記されています。

 

書棚は1メートルにも満たない、低い高さ。ゆとりを持って置かれている

書棚の様子

 

書籍は低い棚に並べられています。

目線を防がないため館内の開放感に一役買っており、また車椅子に乗っている方でも無理なく手の届く高さに設計されているようです。こういった工夫はとても勉強になりますね。

 

車椅子の方向けの、高さを変えられるデスク。デスク板の上面2箇所に車椅子マーク

高さを変えられる昇降デスクも

 

車椅子の方用の、高さを調整できるデスクもありました。

(机の下に這ったコードは車椅子の方にはバリアになりそうですが…)

 

聴覚障害者対応のマークが記載されたエリア

聴覚障害者対応のマーク

 

また、館内には視覚障害者用の誘導ラインが設置されていました。日本の黄色い点字ブロックの方が視認性は良さそうですね。

 

日本の点字ブロックとは異なり、1本の銀色の凸面のラインが床に伸びています

図書館の床面には視覚障害者誘導のライン

 

図書館や空港・駅といった公共の空間には上記のような誘導ラインが設置されていましたが、街に出ると、実はほとんどそのようなものは見られませんでした。

 

どのように移動しているのだろう…と疑問に思っていたところ、ちょうど白杖を持った方が壁をポンポンと叩きながら沿うように歩いている様子に遭遇しました。

なるほど、通行人が多い時は大変そう。

 

ヘルシンキの街の様子。路面電車が行き交い、道路は全て石畳ででこぼこしている。点字ブロックは見受けられない

ヘルシンキの中心街の様子

 

石畳の雰囲気はおしゃれで素敵ですが…視覚障害者用の誘導はなく、凸凹のある路面は車椅子の方にとってもハードルになりそうです。

 

フィンランドを1週間歩いたことで、その国から学ぶべき素敵なことにもたくさん出会いました。ただそれと同時に、点字ブロックのように日本では当然のように用意されているものが、世界では当たり前ではないのだ、ということにも気付かされました。

外からの良いアイデアは取り入れながら自分たちの持っている強みを自覚して、さらに整えていくことが大切なのだな、と感じたフィンランド旅行でした。

フィンランドの様子、おまけ

デイチケットのチケット。白いカードに電車やバスのイラストが描かれている

移動は「デイチケット」で1日中乗り放題

 

ヘルシンキ中を縦横無尽に走っている路面電車(トラム)の電停には改札がありません!特に運転手に提示するという必要もなく、持っているだけでOK。信用の上で成り立っているシステムなんだなと感心しました。

※おそらくベルリンのシステムと同じですね

 

ログハウス風のマリメッコの店舗

マリメッコの店舗。良い天気でした

 

日本で有名なマリメッコはフィンランド発祥のテキスタイルブランド。他にも食器メーカーのイッタラ・アラビアやデリバリーサービスのwoltなどもフィンランドの企業です。woltのカバンを抱えた自転車が街中をめちゃ走ってました。

 

オールジェンダートイレのドア。オスの記号とメスの記号が合わさったようなマークが描かれている

空港内のオールジェンダートイレ

 

トイレの洗浄ボタンは大きい円のボタンと小さい円のボタンが横に並んでいる

トイレの洗浄ボタンは直感的!大きい丸がいわゆる「大」。小さい丸が「小」。文字が読めなくても理解できる仕組みです

 

ヘルシンキ自然史博物館にある、サカバンバスピスの標本

ヘルシンキ自然史博物館にある、サカバンバスピスの標本。かわいい

 

長期休暇にご協力いただいた、ブライトのみなさんや協力会社のみなさまに、改めて感謝いたします。キートス!

 

【UD旅行記バックナンバー】

UD旅行記:アラブ首長国連邦(アブダビ)
UD旅行記:ロンドン
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UD旅行記:シンガポール
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