JASPAオンラインセミナー:高齢者、障害者に分かりやすいカタログを作成するには?
1月26日(木)JASPAオンラインセミナー2021において、ブライト代表の小川が講師を務めました。
テーマは「高齢者、障害者に分かりやすいカタログを作成するには?」。主に福祉用具メーカーのマーケティングやカタログ関係部署の方々に受講いただきました。セミナーの一部をご紹介します。
講義に入る前に「意識度チェック」がありました。○×で考えてみてください。
1 カタログを使う人、読む人が誰なのか?考えていますか?
2 カタログ制作時の文字や色に関するルールが社内にありますか?
3 実際にカタログを読んだ人から意見をもらっていますか?
■1章:制作側と高齢者・障害者とのギャップ事例
冊子やツールを制作するとき、制作側(メーカーやデザイナー)と使う人(高齢者・障害者やその家族)との間にギャップ(意見の相違)が生じることはよくあることです。
セミナーでは、そのギャップを解消して作成された良い事例が3つ紹介されました 。
●事例1:老後のお金に関する教材
全国銀行協会では「人生100年時代」の到来に備え、資産運用や資産管理に馴染みない高齢者にとって分かりやすい教材を制作。
企画段階では金融商品の紹介をメインに検討していましたが、高齢者の要望により、贈与税の非課税制度や成年後見制度など役立つページが追加されました。
※詳しくは、実績ページ「行動につながる高齢者教材」を参照
●事例2:空港での障害者支援ツール
成田国際空港ではUD推進の一環として、外見からは分からなくても空港で援助が必要な方のための支援ツールを制作。
当初は障害の名前や連絡先を記入し、折りたたむカードを企画していましたが「障害の名前を書くのではなく、手伝ってほしいことを伝えたい」「空港では荷物が多いからケースから出さずに使えるカードが良い」など障害者からの要望が反映されました。
●事例3:高齢者交通事故防止の動画
日本損害保険協会では警察庁と連携し、高齢者交通事故の防止・減少の啓発に取組んでいます。
その一環として「多い事故パターンと実践すべき行動のアニメ」を企画していましたが、高齢ドライバーから「一方的に注意しろと言われるのはカチンとくる」などの意見が多かったため、お父さんが運転のお手本を見せるストーリーに変更しました。
■2章:ギャップ解消のためのモニター調査・ユニバーサルデザイン検証
JASPA歩行器・歩行補助器部会で作成された『つえご利用時に潜む危険』注意喚起チラシを使って、モニター調査やユニバーサルデザイン検証の手法が公開されました。
●高齢者モニター調査:
60〜70代の男女からは「色がはっきりしていて、興味が持てる」「つえに危険があることが理解できた」ととても良い評価が多かった。
一方で「左上の「つえ」の文字を大きくした方が良い」「イラストが暗い印象、明るい方が見やすい」などの改善要望も出されました。
●障害者モニター調査:
視覚障害のある男女からも「注意喚起マークと文章はとても読みやすい」と良い意見が上がった一方で「画数が多い漢字は文字が潰れて読めない」「PDFの音声読み上げが機能しない」と障害者特有の要望も出されました。
この他にも、ISO/IECガイド71という国際規格15項目によるブライト独自のユニバーサルデザイン検証により、良い点、改善点が抽出されました。
■3章:分かりやすいカタログの作成方法
2章で出された、高齢者や障害者からの改善要望やユニバーサルデザイン検証の結果を受け、改善するためのデザインノウハウが伝授されました。
元の注意喚起チラシ
改善したチラシ
主な改善点は、
・「グレーチング」は日常用語ではないので「側溝のふた」に言い換える
・色弱の方は赤と黒の区別が難しいので、赤色をオレンジに近い色に変更する
・イラストは明るくし、つえの先のはまりがわかるように色を変更
・弱視の方は画数の多い漢字がつぶれて読めないので、読みやすいUDフォントに変更
などです。
最後に、デザインする上での便利ツールも紹介されました。
●文字、コントラストなどのガイドライン
●文字サイズを決める便利ツール
●分かりやすさを総合的にチェックするツール
詳しい資料をご希望の方はご連絡ください
・お電話: 03-5259-8833 |
分かりやすいカタログ作成時の心得
1 カタログを使う人、読む人が誰なのか?を考える
2 文字や色に関するガイドラインを参考にする
3 実際にカタログを読んだ人から意見をもらう