障がいのある子もない子も みんなで一緒に新体操!その2
東京都三鷹市に誕生した、新体操クラブ「ルミンフィニ」。最大の特徴は「General Class:一般クラス」と「Special Class:障害児クラス」が併設されていること。
7月16日(土)、SUBARU総合スポーツセンターでの体験レッスン会の後半です。
(体験会の前半は、「障がいのある子もない子も みんなで一緒に新体操!その1」をご覧ください。)
◆笑顔が絶えないSpecial Class
一般クラスのレッスンが終わると、次はSpecial Class(障害児クラス)のレッスンがスタート。
視覚障害や知的障害など、さまざまな障害のある子どもたちが在籍していますが、ルミンフィニの理念である「新体操を通じて『しなやかで強い心と身体』を育むこと」という点では、一般クラスと同様です。
体をしっかり動かしながらも、笑顔が絶えないという点も一般クラスと同じ、またはそれ以上かも?
新体操は、リボンやボールなどの手具を使うので、関節の可動域の幅を広げることができるといいます。運動が苦手でも、障害があっても、それぞれのレベルに合わせることができ、楽しく体を動かすことができるのです。
また、音楽を使うことで、聴覚と運動の協調性を高めることも期待できます。
好きな音楽に合わせて体を動かすことが、どれだけ楽しいことかを、子どもたちは体で表現し、見せてくれました。
そして、最後はみんなで輪になって、頑張った自分たちを拍手で称えて今日のレッスンは終了。おつかれさまでした!
◆欠かせないのが、ボランティアのお姉さん
体験レッスンを手伝いにきてくれた新体操部所属の大学生たち(左から順に清水優那さん、窪谷日菜乃さん、濱本心幸さん)。
井上先生は「学生さんたちは子どもたちの憧れですから、彼女たちもまたルミンフィニの大切な仲間です。学生さんたちには、ルミンフィニでの活動で得たものを次のステージで生かしていただけるとうれしく思います」と話します。
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◆参加した子どもや保護者さんに感想を伺いました!パート2
【Special Class・会員】
けんとくん(中1・会員歴12カ月)
「好きな音楽で踊ることが本当に楽しい。学校の友だちにも『いろんなことを勉強できる楽しい教室だよ』と話しています。レッスンも楽しいけど、先生と一緒だとお掃除まで楽しい!」 |
けんとくんのお母さん
「通い始めたころは緊張している様子でした。それが今ではレッスンの日を待ち遠しく思うほど楽しめているようなので、これは息子にとって大きな進歩だと思います」 |
りほちゃん(中1・会員歴1年3カ月)
「ボールを使って体を動かすのが好きです!これからも続けていきたいです」 |
りほちゃんのお母さん
「道具を使った運動は苦手だったのですが、ここでボールに慣れ親しんでいるおかげで、ボールの扱いが上手になってきました。苦手だったことにも自信を持ち始めているので、成長したなと思います」 |
なゆちゃん(中2・会員歴1年4カ月)
「毎回とても楽しくて、来るのがいやだと思ったことは1度もありません!この教室で習う人がもっと増えて、友だちがもっとできたらうれしいです」 |
なゆちゃんのお母さん
「発表会には、大学の新体操部のお姉さんたちが来て、本格的な演技を見せてくださるので、子どもたちも親も大喜び。色んな意味でとても充実している教室なので、もっとたくさんの人たちに、ルミンフィニのことを知っていただけるといいなと思います」 |
はなちゃん(中2・会員歴1年3カ月)
「好きな音楽でダンスをすることがとても楽しい。お気に入りの音楽はAIさんの『Story』と米津玄氏さんの『Lemon』です」 |
はなちゃんのお母さん
「親子ともども、新体操は未知の世界のものでしたが、先生たちのプロフィールを見て、安心してお任せしようと思いました。教室から帰ると『こんなことを習ったよ』とお祖母ちゃんに見せることもあり、コミュニケーション能力も育っているように思います」 |
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教えて! ルミンフィニの先生へQ&A
井上寛子(いのうえひろこ)先生(写真左)
・日本パラスポーツ協会公認初級障がい者スポーツ指導員
・日本体操協会新体操女子審判員(1種)
・日本スポーツ協会公認スポーツ指導者(体操・新体操)
竹下香寿美(たけしたかずみ)先生(写真右)
・日本パラスポーツ協会公認初級障がい者スポーツ指導員
・日本体操協会新体操女子審判員(2種)
・スペシャルオリンピックス日本 コーチクリニック修了(2019年5月)
Q1 どのような思いで、ルミンフィニを立ち上げたのですか? | |
(井上先生) 障がいのある息子を育てる中で、障がいがあっても運動する機会をできるだけ多く持ってほしいとの思いがありました。そこで、行政の力を借りながら、他のお母さんたちと一緒に、水泳、サッカー、テニスなどのクラブを立ち上げたんです。そのときに出会った指導員の先生がダンスや新体操の指導に関心を持っていらして、また、私の専門が新体操だったこともあり、障がいのある子どもを対象とした新体操クラブを立ち上げました。でも、すぐに「障がいのある子もない子も、みんな一緒に育てたい」と思うようになり、対象を「新体操を習いたい子どもたち」と門戸を広げ、約15年にわたり茨城県で活動を続けました。その後、主人の仕事の関係で東京に転居してきたのですが、意外なことに、障がいの有無を問わずに受け入れている新体操クラブが東京にはなかったんです。学校教育においても、障がい児と健常児が交流する機会はほぼないと知り、無いならつくろう!と(笑)。それで、母校である大学の先生に相談したところ、同じような志の人がいると紹介いただいたのが竹下先生でした。準備期間に1年を費やした上で、2021年1月にルミンフィニを立ち上げた次第です。 |
Q2 障がいのある子どもを指導する際に、気を付けていることや大切にしていることはありますか? |
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(井上先生) 障がいのある子どもたちは失敗経験が多いゆえに、自信を失っていることが多いんです。挑戦する前から「できない」と言うこともあれば、「(できないから)やらない」という姿勢を頑なに貫こうとする場合もあります。指導する側としては「無理だよ」「だめだよ」と言った否定的な言葉は一切使わないと決めています。私たちの願いは、子どもたちが「自分もマル、あの子もマル」と考えられる大人になってほしいということ。そのためにも、私たち大人が想像力を働かせ、工夫を凝らしながら、たくさんのマルがあっていいと思える空間づくりを心がけています。(竹下先生) これは障がいの有無に関係なくいえることですが、子どもたちは皆、一人ひとりに個性があり、だからこそ興味を持つことも異なります。私たちはまず、一人ひとりの子どもをしっかりと観察し、その子どもと同じ目線で、興味を持てるものを一緒に見つけていきたいのです。また、子どもが「できるようになったこと」をきちんと認め、その子どもが理解できる形で評価することを大切にしています。 |
Q3 新体操だからこそ身に付くことはありますか? |
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(井上先生) 新体操の最大の特徴は5つの手具(ロープ、フープ、ボール、クラブ、リボン)を使うこと。手具を使うからこその造形的な美しさは、新体操ならではだと思います。しかも、それらは音楽とセットで使われますから、子どもたちの感性は目に映る美しいものに加え、音楽がもたらす感動によっても磨かれていきます。また、新体操は自分の内面を表現するスポーツなので、練習を重ねていくと、自己表現をすることに抵抗がなくなり、「自分の素敵な部分」を素直に表に出せるようになっていくんです。それができるようになると自ずと自己肯定感が高まるので、自信が生まれ、自分以外の人の良いところにも気が付くようになり、円滑な人間関係の構築に役立ちます。さらに、団体競技という意味では協調性も育まれます。 |
Q4 ノーマライゼーションを推進していく上で、大切なことは何だとお考えですか? |
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(竹下先生) この世界にはいろんな人がいます。完璧な人なんていません。お互いの足りないところを補い合うことが普通の世界になれば、ノーマライゼーションは意識しなくても自然に進むはずです。皆が同じであることを良しとする風潮を変えるのに最も有効な方法は、子どものうちから多様性を認め合える環境に身を置くことです。ルミンフィニに在籍している子どもたちは、障がいの有無に関係なく助け合ったり、共に楽しんだりすることができています。そういう意味で、これからもルミンフィニという場所が、ノーマライゼーションを意識しなくても実現できる場所でありつづけられるよう、私たちも尽力していきたいと思います。 |
体験を希望される方は、お気軽にメール luminfini●gmail.com(●記号を@に置き換えてください)、またはお電話(070-1181-1598)でご連絡ください!
取材協力:
有限会社フォトスペース・パッション フォトグラファー 村⽥和聡(むらたかずとし)
株式会社トライ ライター 那須桂(なすかつら)