全国銀行協会:ペーパーレス化で普及啓発を強化
2020年度、全国銀行協会の相談室には、14,645件の相談、3,822件の苦情が寄せられました。
そこで具体的な相談の事例や、フィッシング詐欺の注意喚起など「運営状況レポート」を年1回発行しています。
2021年8月に発行された第4号のレポートでは、SDGsの観点から紙の使用量を減らしながらも、スマホや動画で情報提供し普及啓発を強化しています。
SDGsへの貢献 | 「運営状況レポート」第4号 | |
1.高齢者や障害者との協働
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●高齢者からの意見を動画に反映
●障害者からの要望を冊子に反映 |
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2.誰も取り残されないための配慮
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●色弱者にも区別しやすい色使い
●アクセシブルPDFと音声読み上げデータ |
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3.段階的なペーパーレス化
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●動画を配信し、紙の使用量を50%削減
●環境に配慮したFSC認証紙を使用 |
1.高齢者や障害者との協働
より多くの消費者へ広く普及啓発が必要な場合は、情報弱者といわれる高齢者や障害者へ配慮することが大切です。
そこで、「運営状況レポート」冊子や「2分で分かる全銀協ADR」動画のデモ版を高齢者や障害者に見ていただき、意見や要望を取り入れました。
例えば、聴覚障害の方からは「略語の読み方が分からないので、読み仮名をふってほしい」との要望があがりました。
「全国銀行協会」の読み方は、学校で学んだ単語を組み合わせたり、辞典で調べれば分かりますが、「全銀協」などの略語は、耳の不自由な人は話し声を聞く機会がないため、正しい読み方が分からないのです。
このように、高齢者や障害者と一緒に、印刷物や動画を制作していくことは、SDGs4「質の高い教育をみんなに」やSDGs8「働きがいも経済成長も」への貢献につながります。
2.誰も取り残されないための配慮
SDGs9「金融サービスを利用しやすくする」と記され、誰一人取り残されないよう、情報の伝達手段に配慮する必要があります。
色弱者(色の区別が苦手な人)は日本に320万人以上いると言われているため、本冊子と動画は、カラーユニバーサルデザイン検証を行い、色の区別がしやすいよう配慮されています。
また、視覚障害の方は冊子を読む代わりに、何から情報を得ているのか、ご存知ですか?
視覚障害の方は、パソコンやスマホの「音声読み上げ機能」を使って情報を得ています。
本冊子の情報も、読み上げ対応のテキストデータを提供しています。
このように、障害の有無に関わらず正しく情報を伝えることは、SDGs10「人や国の不平等をなくそう」という観点からも有効です。
3.段階的なペーパーレス化
「運営状況レポート」第4号では、紙の使用量を昨年比50%削減しました。その代わり、多くの人に全銀協ADRを周知するため、2分程度の動画を配信しています。
動画は、スマホでも見やすく設計されており、いつどこでも視聴できます。また、字幕付きのため、音声が出せない環境や聴覚障害者への配慮としても有効です。
※詳しくは、2分で分かる全銀協ADR「全銀協ADRとは?」をご参照ください。
ペーパーレスは、すべての冊子を取りやめるのではなく、段階的に導入することがお勧めです。
なぜなら、パソコンが苦手な方や高齢者など、冊子で読みたいというニーズは一定数いるからです。大事なのは、情報を必要としている人に、最適な方法で届けること。
本冊子も、全国の消費生活センター、全国消費生活相談員協会、指定紛争解決機関、あっせん委員会委員など約100カ所へ配布され、有効活用されています。
なお、冊子の用紙は、環境に配慮されたFSC認証を受けています。FSC認証は、林業で働く人の人権を尊重するなどSDGsの1〜8、12〜17の合計14の目標に対して貢献しています。
このように、ペーパーレスを推進するにあたっては、情報弱者と呼ばれる、高齢者、障害者、外国人などへも等しく情報が伝わるよう留意し、誰一人取り残されないような配慮が必要なのです。
・ペーパーレスの推進は、今まで紙がバリアだった視覚障害者にとってもメリットが大きい
・すべてをデジタル化にするのではなく、対象者に合わせて段階的に取り組んでいくことが重要