障害について知る 2024年8月26日

2025年に日本で開催!デフリンピックってなんだ?

熱戦の繰り広げられたパリオリンピック。大逆転のスケートボード堀米選手2連覇、馬術で92年ぶりにメダルをもたらした”初老ジャパン”、疑惑のルーレットなどなど、連日のニュースに日本中が湧きました。8月28日からは勢いそのままにパリパラリンピックが開催されます。

 

そして来年、2025年11月には日本で大きな国際スポーツ大会が開かれることをご存知でしょうか。それがきこえない・きこえにくい人のための大会、デフリンピックです。
※当ブログでは障害者権利条約の理念である「社会モデル」に沿い、「聴覚障害」の言葉の代わりに、「きこえない」「きこえにくい」「きこえる」という言葉を使用します。

 

実は今回の大会が記念すべきデフリンピック100周年の大会。さらには日本での初めての開催となります。この機会にぜひ、デフリンピックについて、またきこえない、きこえにくいことについてもっと詳しくなってみませんか?

デフリンピックは100年の歴史あるスポーツ大会

デフリンピックは、1924年から始まった深い歴史のある国際スポーツ大会です。オリパラ同様4年に1度、夏季と冬季の大会が交互に開催されます。

 

夏季大会では陸上競技、水泳、テニスなど20以上の競技が、冬季大会ではスキー、スノーボードなど6つの競技が行われています(2024年8月現在)。第25回夏季デフリンピック競技大会(略称:東京2025デフリンピック)では70~80の国と地域が参加予定です。

東京2025デフリンピック公式エンブレム

東京2025デフリンピック公式エンブレム

デフスポーツの様々な工夫

参加者はきこえない、きこえにくいアスリート。外見ではわかりづらい特徴なだけに、「健常者と同じ大会に出ればよいのでは?」と思う方ももしかしたらいるかもしれません。もちろんきこえない、きこえにくい人も健常者と同じ大会に出場することはできますが、そこには様々なハードルがあります。

 

例えば打球音やスタートピストル、審判の合図が聞こえないこと。団体競技では声かけができません。またきこえない、きこえにくい人の特性としてバランス感覚の異常を伴います。

 

そのため、デフスポーツでは様々な工夫がされています。例えば陸上競技では以前はスターターや近くの選手を目視してスタートを行っていましたが、特にクラウチングスタートで行う短距離種目においては、不利な体勢を余儀なくされていました。

 

そこで開発されたのが「スタートランプ」です。スタート音を光の合図で知らせる装置で、ピストルと連動し、オン・ユア・マークス「赤」、セット「黄」、号砲「緑」と色の変化によって選手に合図を知らせます。

 

陸上競技のスタートランプと音響装置

陸上競技のスタートランプと音響装置

空手競技のランプ

空手競技のランプ

 

また、応援をする際は声援を送る代わりに床を踏み鳴らし、その振動でエールを送るそうです。

 

競技のルール自体は私たちが知っているものと変わりませんが、このように「目」でわかるさまざまな工夫を取り入れています。きこえない、きこえにくい人同士で同じ条件のもと競い合うことに大きな意義があるのですね。

きこえない、きこえにくい人とのコミュニケーションについて

さて、来年のデフリンピック開催にあたり、参加者や応援する方々が集まることが予想されます。きこえない、きこえにくい人とはどのようにコミュニケーションをとればよいのでしょうか。いくつかの方法をご紹介します。

 

1)口話…口の動きを読み取る方法です。はっきりゆっくりと、文節を区切ることで伝わりやすくなります。大きな声を出す必要はありません。

2)筆談…メモに書いて伝える方法。スマートフォンでも代用できます。筆談の難しい方もいるため、筆談をしてよいかどうか確認をすると良いです。

3)手話…手指の動きや表情を使って視覚的に表現する言語。

簡単な挨拶だけでも覚えていると、コミュニケーションに有用です。ただし、「きこえない、きこえにくい人=手話」と思われがちですが、手話を使える方はきこえない、きこえにくい人の2割弱といわれていますので留意が必要です。

また、下記のようなコミュニケーション支援ツールや、手話動画をあらかじめ用意することも有効です。

コミュニケーション支援ボード

コミュニケーション支援ボード|成田国際空港

画面:株式会社ブライト会社案内の手話動画

会社案内手話動画|株式会社ブライト

大切なのは勝手な思い込みをしないこと。どのような支援が望ましいか、もしくは手助けがそもそも必要なのか、一人ひとりと向き合ってコミュニケーションをとることが大切です。

床を踏み鳴らして応援しよう!

デフリンピックは、デフスポーツやきこえない、きこえにくい人の文化への理解促進、手話言語の普及にも大きく貢献しています。デフスポーツの魅力や価値を伝えることで、“誰もが個性を活かし力を発揮できる” 共生社会の実現をめざしているものです。

 

冒頭でもお伝えしましたが、日本で開催されるはじめてのデフリンピック。よかったら応援に足を運んでみませんか。みんなで床を踏み鳴らしましょう!

 

◆おまけ:パラスポーツについて紹介している記事もありますので、よかったらご覧ください。

ブラインドサッカーで試合中選手が掛ける声は、ボイ?ヘイ?ハロー?

 

ここがUD

・デフリンピックはきこえない・きこえにくい人のためのスポーツ大会。
・ピストルの代わりのランプ、審判は旗で合図など様々な工夫がされています。
・きこえない、きこえにくい人とのコミュニケーション方法には口話、筆談、手話などがありますが、大切なのは一人ひとりと向き合うこと。