障害について知る 2022年7月8日

ペットボトルで雲をつくる?障がいや病気のある子どものきょうだいのイベント

6月25日(土)に、第1回「2022きょうだい児サポートプロジェクト」が開催されました。主催者は、横浜国立大学の高野陽介先生と、訪問看護師の重永あずささん。

 

富津市や一般財団法人齋藤茂昭記念財団協力のもと行われ、地元の亀田医療大学看護学部の学生もボランティアで参加。地域の人たちと行政が一体となった、画期的なイベントです。

 

スライド画面:あしたの天気は何だろう

 

千葉県富津市にある「イオンモール富津」の特設会場に集まったのは、小学生のきょうだい児12名。「きょうだい児」とは、障がいや病気のある子どものきょうだいのことです。

 

TBS系列の番組等で活躍される気象予報士の桜沢信司さんをスペシャルゲストに招き、天気の不思議や災害から身を守る方法について、たっぷりと教えてもらいました。

 

「あしたの天気は何だろう」〜空が教えてくれるこれからのこと〜

「こんにちはー!気象予報士の桜沢信司です!」

元気な挨拶とともに現れた桜沢さん。

 

桜沢さんの自己紹介の様子

 

大きな身振り手振りと、よく通る朗らかな声が印象的です。それを見た子どもたちは圧倒されて、少し緊張がほぐれた様子でした。

 

桜沢さんの自己紹介をお手本に、今度は子どもたちが前に出て自己紹介をします。お名前のほか「好きなこと」「将来の夢」など、堂々とマイクを使って発表します。

 

小学生が自己紹介している様子

 

全員の自己紹介が終わると、桜沢さんから「今日の目標」が発表されました。

 

スライド画面:きょうの目標

 

目標は「未来のお天気キャスターになること」。目標を達成するために、4つのテーマについて勉強していきます。

 

テーマ① 空気の流れをよむ

テーマ② 空・天気図を見て天気を当てる

テーマ③ 千葉県の気象災害を知る

テーマ④ 2100年のお天気キャスターに

 

それでは、詳しく見ていきましょう!

 

テーマ① 空気の流れをよむ

「空気砲って知ってるかな?」と言いながら桜沢さんが取り出したのは、真ん中に大きな穴の空いた段ボールの箱。

 

スライド画面:空気砲

 

箱の両側を思い切り叩くと、穴から白い煙が出てきました!

桜沢さんが「やってみたい人〜!」と声を掛けると、子どもたちが一斉に手をあげます。

 

空気砲を実践する小学生

 

風船に目掛けて、白い煙を発射!どんな速さで、どんな方向に空気が移動するのか、よく見えました!

 

テーマ② 空・天気図を見て天気を当てる

続いては、空に浮かぶ雲や天気図を見ながら、天気を当てる勉強です。

 

スライド画面:この雲の名前は?

 

雲には、積乱雲・乱層雲・層積雲などの10種類があり、雲の形によって天気を当てることができるそう。

いろんな天気図と雲の写真を見たあとは、ペットボトルを使って、「雲をつくる」実験をしました!

 

ペットボトルで雲を作る小学生

 

ペットボトルの中に雨のもと(アルコール)を少量入れたあと、専用のフタを使ってペットボトル内に空気を入れます。

「3・2・1」の合図でフタを外すと……ペットボトル内には真っ白な雲が!

 

なぜ雲ができたのでしょうか?

 

スライド画面:なぜ雲ができたの?

 

ペットボトル内に空気を入れると、中の温度が上がり、アルコールは水蒸気になります。その状態でフタを開けると、ペットボトル内の温度が下がり、中の水分が氷や水の粒になって雲ができたのです。

 

全員が交代で実験し、はじめての雲づくりを体験しました!

 

テーマ③ 千葉県の気象災害を知る

次に、千葉県の気象災害について教えてもらいました。

千葉県は「比較的雨が少なく、暑い」地域なのだそう。とはいえ、暑さは地域によりさまざまです。

 

スライド画面:千葉県の気象災害をしる

 

最高気温が30度以上の年間日数で比べてみると、勝浦は約17日。そして木更津は、なんと51日もありました!

そして千葉県と言えば、2019年に大型の台風15号が来たことが記憶に新しいですよね。停電や土砂災害など、甚大な被害をもたらしました。

桜沢さんが「その時の瞬間風速は、なんと57メートルでした!」と言うも、子どもたちはいまいちしっくりきていない様子…。

 

瞬間風速57メートルを説明する桜沢さん

 

「瞬間風速57メートルっていうのは、1秒間に57メートルも進むってことだよ!」と言うと、少し伝わったようでした。

 

最後に、桜沢さんからクイズが出題されました!

「1時間に50ミリの激しい雨。大人用の傘に降ったら、500mlのペットボトル何本分の重さがかかるでしょう?」

 

 ①1本分

 ②10本分

 ③100本分

 

3択で、子どもたちに手を挙げてもらいました。

一番多かったのは③100本分。②の10本分という子もちらほら。

 

スライド画面:こたえ100本

 

正解は100本分です!

それほどの負荷がかかるとは…… 筆者自身も知らなかったので、大人も子どももびっくりの知識でした。

 

テーマ④ 2100年のお天気キャスターに

イベントも終盤、ここまで学んできたことを踏まえて、子どもたちがお天気キャスターになります。

お題は「2100年のお天気」。まずは15分、もくもくと原稿を作成します。

 

原稿を作る小学生

 

桜沢さんや、ボランティアのスタッフの力を借りながら、すごい集中力を発揮する子どもたち。

そして、3つのグループに別れて合同発表へ!

 

発表している小学生3人

 

あるグループの発表では……

「2100年、千葉の気温は42度。アイスが一瞬で溶けてしまいそうな暑さです」

桜沢さんも思わず「良い表現だね!今度、僕も使わせてもらいたいくらいです!」と大絶賛。

 

合同発表の様子

 

褒められた子どもは思わずニンマリして、後方に座っているお母さんに目くばせ。お母さんも、その姿を嬉しそうに見ていました。

 

「未来のお天気キャスター」認定式へ

 

全グループの発表が終わると、「未来のお天気キャスター」認定式が始まりました。

一人ひとり名前が呼ばれ、桜沢さんからの一言とともに認定証を受け取ります。

 

認定証を受け取る小学生

 

受け取った子どもたちは「楽しかったです!」「ありがとうございました!」と感想を述べて席へ。席について、認定証を開きながらニコニコ。達成感あふれる笑顔が印象的でした。

たっぷり1時間半、きょうだい児のたくさんの笑顔が生まれた素敵なイベントでした!

 

プロジェクト発足の背景

 

最後に、本イベント発足の背景を主催者の高野先生、重永さんに伺いました。

 

高野先生の顔写真 横浜国立大学教育学部 講師 高野 陽介 氏

「障がいを持つ子どもの親御さんから『障がい者本人が参加できるイベントはあるけれど、そのきょうだいが参加できるイベントが少ない』と相談されました。私は、特別支援教育の研究をしているので、今までの経験やネットワークを活かしてみようと、きょうだい児に関するプロジェクトを企画しました」

 

重永さんの顔写真 ルピナス訪問介護ステーション 所長 重永 あずさ 氏

開催するにあたり『うちの子には必要ありません』『きょうだい児という新たなカテゴリをつくることになるのではないか』といった厳しい意見もいただきました。それでも諦めなかったのは、『あなたたちの力になってくれる大人はこれだけいるんだよ』ということを、子どもたちに知ってほしかったからです」

 

 

第2回イベントは、オンラインシンポジウム!

 

次回のイベントは、8月6日(土)にオンラインで実施されます。

「きょうだい児」をテーマとして、きょうだい児本人、そして教育、医療、行政などのそれぞれの専門家が集い、熱いディスカッションを展開。Zoomでのオンライン開催となるため、全国のどなたでも参加可能です。

 

すべての子どもが安心して過ごせる社会~きょうだい児について考える~ 

●日時:8月6日(土)13:15〜15:00(受付13:00)
●参加費:無料
●形式:オンライン(Zoom)
●定員:100名

●出演者:
 横浜国立大学教育学部 講師 高野陽介 氏
 一般社団法人Yukuri-te代表理事・亀田総合病院 小児科部長 湯浅正太 先生
 ルピナス訪問看護ステーション所長・亀田医療大学大学院 看護研究科 重永あずさ 氏

●参加方法:参加フォームよりお申し込みください。
1週間前にZoomへの入室方法をメールでお知らせします。

●問い合わせ:2022きょうだい児サポートプロジェクト
ルピナス訪問看護ステーション内 特設事務局 代表 重永あずさ
電話:0439-27-1677
2022
メール:sbg.sup2022●gmail.com(●記号を@に置き換えてください)

 

シンポジウムチラシ

 

第2回イベントのポスターもご参照ください。

どなたでも参加できるイベントですので、ぜひご参加ください!

 

投稿者:白石果林
法政大学 現代福祉学部卒業。学校法人・一般企業にて8年間勤務したのち、フリーランスライターとして独立。福祉、働き方、事業承継などの分野で取材・執筆を行う。

 

ここがUD

イベントが始まると、会場に入ってくるのは緊張した面持ちの子どもたち。席についても、表情はこわばったままでした。
しかし、イベントが進むにつれて、子どもたちの表情に変化が。最初は手を挙げるのも遠慮がちだった子どもたちですが、桜沢さんの「やりたい人〜?」の声に、一斉に手をあげ、走って前に出ていくまでに。
イベント開始当初とはうってかわって、楽しそうに参加しているきょうだい児たちの姿が印象的でした。