障害について知る 2022年3月26日

図鑑で学ぼう!『耳の不自由な人をよく知る本』出版

「耳の聞こえない/聞こえにくい人は、どうやって生活しているの?」
「どんな仕事をしているの?」
「どうやってコミュニケーションをとればいい?」

 

そんな疑問にこたえる、『耳の不自由な人をよく知る本』が合同出版より発売されました。

聞こえない/聞こえにくい人たちが、普段どんな1日を過ごしているか、どんなことを考えているか、のぞいてみましょう(協力:合同出版)。

 

1 『耳の不自由な人をよく知る本』ってどんな本?

 

耳の聞こえない、聞こえにくい世界を知り、ともに生きるには何が必要か? 偏見や思い込みをとり除き、ありのままを理解するための「障害学習図鑑シリーズ」第2巻です。

 

写真:図鑑の表紙

 

イラスト・写真が多く、全編フルカラーの99ページ。

当事者のリアルな声に加え、専門家や医師による解説もあり。より深い理解を得られる内容ながら、難しい専門用語は使われておらず読みやすい1冊です。漢字にはふりがなが振ってあるので、大人も子どもも楽しめます。

シリーズ第1巻は、『目の不自由な人をよく知る本』。

詳しくは、2021年4月のUDレポート、「図鑑で学ぼう!その1―障害学習ビジュアルブック『目の不自由な人をよく知る本』」で紹介しています。

 

 

2 聞こえない、聞こえにくいって、どんな世界?

 

「聴覚障害者はまったく音のない世界にいる」

「だれでも手話が使える」

「補聴器をつけているから聞こえている」

 

イメージ画像:補聴器をつけている女性

 

このように思われることが多いですが、これらは誤解です。聴覚障害といっても、「どこ」に障害があるのか、「いつから」聞こえなくなったのか、「どのくらい」聞こえないのか、人によってさまざま。

片側の耳だけ聴力が下がる「片耳難聴」や、低い音だけが聞こえにくくなる「低音障害型感音難聴」が、その一部です。

前ぶれもなく突然聞こえにくくなる「突発性難聴」になれば、もちろん勉強していない手話は使えません。また、その日の環境や体調によっても、聞こえ方は左右されます。

 

図鑑本文42-43ページ

 

なかには、聞こえにくいことに加え、耳なりがする人もいるそうです。ボーンボーンというベースのような重い音、ピーという金属音のような高い音、ザーッという波の音などが、いつも鳴り響いていて、睡眠薬を飲まないと眠れないほど苦しいという方も。

 

聞こえにくさを補う機器として補聴器が代表的ですが、補聴器で効果が得られないことも多くあります。

その場合は「人工内耳」という医療機器があり、世界では3700万人ほどが使っていると言われています。これは、音を電気信号に変える機器を体の中に埋め込む手術をするのですが、日本では1985年に導入され、15,000件ほどの手術が行われています。

 

 

3 聞こえない、聞こえにくい人の暮らしの工夫

 

聞こえない、聞こえにくい人は、日々の暮らしのなかにどんな工夫を取り入れているのでしょうか?

 

画像:図鑑本文16-17ページ

 

小学6年生のゆいさんは、電車の車内でガタンゴトンの音がかすかに聞こえるくらい(80デシベル)。話し声は聞こえませんが、ブルブル振動する目覚まし時計を使って、毎朝ひとりで起きます。難聴学級に通っている以外の時間は、塾に通ったり、テレビやゲームを楽しんだり、ダンスを習ったり。

 

アイドルに憧れるゆいさんは、ヒップホップをかっこよく踊って学校で発表するのが目標です。リズムに合わせて先生が背中をタッチしてくれるので、それに合わせて振り付けを覚えます。

 

イメージ画像:駅の電光掲示板

 

印刷会社で働くたかしさんは、発車ベルの音が聞こえず、ドアにはさまれてしまったことがあります。車内放送が聞こえないため、何が起こったか分からず困ることも。音声案内だけではなく、字幕表示や、筆談で知らせてくれる人がいると安心です。

 

会社では筆談で会話したり、会議のときは、パソコンでノートテイク(内容を文字に変換)してもらったりと、フォローを受けながら業務にあたります。

 

画像:図鑑の本文22-23ページ

 

コロナ禍でオンライン会議が増えた昨今、ちょっとした困りごとも。口の動きが読み取れないことが多く不便を感じてしまうのです。そんなときは、音声変換アプリやチャットなどを駆使して補うのだとか。

・・・

残念なことに、聴覚障害者が会社をやめる理由の多くは「指示が分からなくても聞き返せない」「聞こえる人ばかりの場所では、会話に入っていけない」といった職場のコミュニケーションにあると言われています。

 

筆談やメールを活用したり、ゆっくり話したりと、ほんの少しの配慮が互いに働きやすい環境づくりにつながる、本書を読んで、そんな気づきを得る人が増えたら素敵です。

 

 

4 聞こえない、聞こえにくい人の仕事

 

日本では「欠格条項」といって、身体や精神に障害のある人は、医師や薬剤師、看護師などの免許がとれないことが法律で決められていました。

 

しかし2001年、法律が改正し、聞こえない/聞こえにくい人たちが自身の夢を叶えられるようになったのです。

 

画像:図鑑本文72ページ

 

薬剤師になるという幼いころからの夢を叶えた早瀬久美さん。早瀬さんは1998年、国家試験に合格しましたが「欠格条項」により、免許の申請を却下されました。

 

その後、法律改正を訴える活動に当事者として参加し、220万人もの署名を集めます。念願かなって、聴覚障害者としては初の薬剤師となったのです。

 

道を切り拓いた早瀬さんのほか、医師や弁護士、税理士、政治家、バスの運転士、映画監督など、活躍している人は多く、仕事の幅は多岐に渡ります。

 

 

5 聞こえない人、聞こえにくい人とのコミュニケーション

 

男女とも40代から聴力が低下していくといわれていますので、聞こえない、聞こえにくい人は周りにも多くいるのではないでしょうか?
※国⽴病院機構東京医療センター プレスリリースより 

 

本書を読み進めて分かることは、「音」以外のコミュニケーションは、たくさんあるということ。一方で、「話が通じないから」とコミュニケーションを閉ざされて、悲しい思いをしたという方も。

 

画像:図鑑本文84-85ページ

 

たとえ手話ができなくても、身振り手振りや筆談で、ゆっくり話すことで、聞こえない、聞こえにくい人とつながれるということを、本書は示しています。ヒントを読んで、ぜひ実践してみてください!

 

★ヒント1 相手をよく見る

お互いに、話す人の口の動き、表情、手ぶり・身ぶりをよく見ながら、理解できているかを確認しながら話をします。目からの情報は、耳からの情報を補足する大切なコミュニケーションです。

★ヒント2 聞きやすく見やすい環境

窓のそば、暗い場所は光の影で、口の形や表情が分かりにくいことがあります。また、補聴器をしている人との会話は、音が反響してしまう場所や、ラジオやテレビなどの雑音がある場所は避けましょう。

 

 

 

画像:投稿者白石さんの顔写真 投稿者:白石果林
法政大学 現代福祉学部卒業。学校法人・一般企業にて8年間勤務したのち、フリーランスライターとして独立。福祉、働き方、事業承継などの分野で取材・執筆を行う。

 

ここがUD

ろう者で自転車競技の選手でもある早瀬憲太郎さんは、こう言います。「ぼくは耳が聞こえないことを不自由とは思っていないし、聞こえない自分に誇りを持っています。(中略)いったい何がぼくたちを不自由にしたのだろう」。

耳が聞こえることが前提で、モノやサービスがつくられることは少なくありません。誰かの生活の利便性が上がっている一方で、誰かの「不自由」をつくっているのです。

健常者だけではなく、見えにくい人、聞こえにくい人、いろんな人の意見を聞いて理解すること。誰もが使いやすい、暮らしやすいデザインは、そこから生まれる・・・、そんな視点に立ち返らせてくれる1冊です。