SDGsの取り組み 2022年2月19日

横浜国立大学「障害者とともに考えるSDGsと共生社会」の質問に答えます:その2

横浜国立大学全学教育科目「障害者とともに考えるSDGsと共生社会」のオンライン講義後に、受講した学生さんから162件もの感想カードが寄せられました。

 

学生さんからの感想カードには、

「障害者の自立を支援できるよう障害者施設などで販売されているグッズを購入していきたい」

バナナペーパーは、廃棄されるバナナの茎が誰でも使えるような紙に変わり素晴らしい」

ユニバーサルマナー検定共生社会コミュニケーション検定を受験してみよう」

 

など、たくさんの意見・感想がありました。その中でも、特に多かった6つの質問(今回は質問4〜6)について、共用品推進機構の森川氏、アドバイザーで弱視の芳賀氏に協力をいただき回答します。

(講義内容に関しては、2021年12月の横浜国立大学でオンライン講義「障害者とともに考えるSDGsと共生社会」をご覧ください)

 

Q4男性イラスト ◆質問4

目が見えない人でも点字や朗読されたもので本を読むことができるそうですが、発売されたばかりの新しい本でも点字や朗読されたものが同時期に出るのでしょうか?

写真:点字を触って読む女性の指 

 

 さすが!これは、出版物の著作権との問題で、長く議論されている重要課題です。

 

 

日本では、2019年6月に「読書バリアフリー法」が成立されました。障害の有無に関わらず、すべての人が読書の恩恵を受けられるようにするための法律で、図書館の本も、書店で販売される本も、利用しやすい形式になることを目指しています。

 

▼出版のバリアフリーには、次のような取り組みがあります。


1.本を購入した人に、音声読み上げできるテキストデータを提供(テキストデータ引換券を出版社に送る、奥付のQRコードからWebで依頼するなど)
2.kindleなどの電子書籍やオーディオブックなど、音声で読み上げられる書籍


 

※出版のバリアフリーについては、UDレポート:絵本『ゆうこさんのルーペ』出版!―共生社会ってどのように創るのだろう?―をご覧ください。

 

しかし課題もあります。まだ多くの書籍は、点訳(点字のデータにする、点字に書き直す)したり、音訳(朗読)データをつくったりするので、出版してから時間をかけないと読むことができない場合があるのです。参考書や授業で使う本などのように、すぐに使わなければならない書籍は、図書館や学生支援室で、点訳や朗読のサービスを受けることとなります。

 

 

Q5女性イラスト ◆質問5

障害者施設で働く人の時給が低いことに驚きました。その理由が気になるのと、改善するためにどのような取り組みをしているのか知りたい。

画像:京丸園で働く人々

 

 これは非常に多かった質問です。全国の最低賃金の平均が902円(2020年度)に対し、就労継続支援B型の時給は、223円(2019年度)だからです。

 

 

障害者施設の工賃が低いのは、雇用形態の問題、生産性が低くなってしまう、販売する経路が乏しいなど理由は様々です。

しかし昨今、障害者も健常者もともに働く、共生社会を実現している企業が増えています。障害の有無に関わらず共に働き、しっかり利益を上げ、工賃を上げている企業には共通の取り組みがあります。次の2つの事例から考えてみましょう。

 

▼事例1:京丸園


ねぎ農園「京丸園」は、約100名の従業員のうち障害者24名が働く農業法人。

難しいねぎの植え込みは、下敷きを使って行うなど工夫しています。また「トレーはスポンジで5回こすってね」など分かりやすく指導することで、障害のある人でも農園で活躍することができるのです。

※詳しくは、UDレポート:障害を身近に考える絵本『めねぎのうえんのガ・ガ・ガーン!』出版をご参照ください。

 

▼事例2:日本理化学工業


チョークの製造会社「日本理化学工業」は、全社員88人のうち63人が知的障がいのある社員

文字や数字が読めなくても色で量り方を覚えてもらったり、時計の代わりに砂時計を使ったりしています。チョークのサイズが規格に合っているかを計測する道具も開発され、結果として全社員にも使いやすく、安定した品質で効率良く生産できることにつながったそうです。

※詳しくは、UDレポート:観覧車で「らくがき」が楽しめる!7月3日から9月20日まで東京ドームシティへGO!をご参照ください。

 

これら2社の共通の取り組みは分かりましたか?

どちらも「人を仕事に合わせる」のではなく、「仕事を人に合わせればいい」という工夫をしているのです。このような共生社会を実現する会社が増えれば、賃金の問題も少しずつ解消されていくのではないでしょうか?

 

 

Q6男性イラスト ◆質問6

身近で気軽にできるボランティアなどあれば教えてほしい。

画像:渡辺が知的障害の子供に体操を指導するボランティア

 

 「自らできることについて考え実行しよう」という学生さんのコメントが多く寄せられ、感激しました。

 

 

全国の都道府県には「社会福祉協議会」という社会福祉法人があり、身近でできるボランティアを募集してます。

例えば、横浜市社会福祉協議会のボランティアセンターでは、高齢者や障害者、子供への支援ボランティアを募集しており、メールアドレスを登録するとボランティア情報が配信されるサービスもあるようです。また、講義で紹介したように自分の興味あること(スポーツ、アート、教育など)の分野でWebで検索してみることも一つです。

※横浜市ボランティアセンター
http://www.yokohamashakyo.jp/yvc/index.html#top

 

是非、より多くの学生さんたちが、SDGsへの貢献や共生社会の実現へ向けた一歩を踏み出すことを願っています!

※質問1〜3は、横浜国立大学「障害者とともに考えるSDGsと共生社会」の質問に答えます:その1をご覧ください。

 

▼関連UDレポート

横浜国立大学でオンライン講義「障害者とともに考えるSDGsと共生社会」

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