『共⽣社会の教養』その2:会議のとき障害のある⼈に配慮する点は?
「アクセシブルミーティング」をご存知ですか?聞いたことはあっても、どのような内容なのか分からないという方は多いのではないでしょうか。
今回は、8月3日のブログに掲載した本『共生社会の教養』から、アクセシブルミーティングに着目し紹介します。
※『共生社会の教養』は、「『共生社会の教養』その1:障害のある人が交通機関で嬉しかった出来事は?」でも詳しく紹介しています。
https://bright3.jp/2021/08/03/universalsociety01/
1 会議の準備で配慮するポイントは?
アクセシブルミーティングとは、「みんなの会議」のこと。障害の有無、年齢の高低にかかわらず、誰もが参加できる会議を指します。
会議の準備で配慮するポイントは大きく分けて3つです。
①会議の案内
会議の案内を送る際は、事前に参加者の特性を把握したうえで、適切な様式を選定します。拡大文字版や点字版、電子媒体版など、参加者のニーズに応じた複数の形態を用意しましょう。
障害者用駐車場の位置は、イラストや写真付きで案内すると分かりやすいですね。
②アクセスと誘導
会議の主催者は、参加者の特性を把握したうえで、最寄駅から会場までの動線を確認。階段やスロープの有無、視覚障害者誘導用ブロックが整備されているかなどもチェックし、アクセス可能なルートを参加者に案内します。
さらに会議当日は、誘導サポート人員を最寄駅から会場までの各所に配置しておくと安心です。
③会議資料
会議資料は、参加者の希望に応じて、点字、デジタル音声、電子データ、拡大文字などの資料を用意しましょう。
読みやすい文字の大きさやコントラストのはっきりした色彩の採用、難しい漢字にはふりがなをふる、といった工夫も必要です。さらに、文字ばかりではなく、簡易的な図やグラフを活用すると、理解しやすくて良いですね。
視覚障害者へどのような配慮が必要か、ブライトのブログでも紹介しています。
詳しくは、「日本の視覚障害者は164万人、どうやって文字を読んでいるの?」ページをご覧ください。 |
2 会議の当⽇に配慮することは?
続いては、会議の当日に配慮が必要な2つのポイントを見ていきましょう。
①会場設営・運営
会場の設営をする際は【席の配置】【テーブルの高さ】【照明】【音響】などへの配慮が必要です。詳しく見ていきましょう。
【席の配置】
机は、円卓を使ったり、口の字型に配置したりすると、司会や手話通訳を含め全体を見渡せるようなります。聴覚に障害がある方が参加する場合は、テーブルに名札を設置するといった工夫もあるといいですね。
【テーブルの高さ】
テーブルは、車椅子のアームレストやフットサポートがぶつからない高さのものを選びましょう。一般的には、テーブル上面までの高さが70㎝、下面までの高さが67㎝が推奨されています。
【照明】
会議でプロジェクタを使用する際、投影が見えやすいように部屋を暗くしますよね。しかし、手話通訳士がいる場合だと、暗くて手話が見えにくくなる可能性があります。そのため、プロジェクタ周辺のみ暗くするなど、環境を整える工夫を取り入れることが大切です。
【音響】
音量調節やクリアな音質を確保できるスピーカーを用意するなど、音響環境を整えましょう。
②会議の開始・進⾏
会議は、「参加者全員が情報を共有・理解しながら進行する」ことが重要です。それを実現するためのポイント3つができているか?チェックしてみてください。
ポイント1 | 会議をスタートする際、全体の流れや所要時間、具体的な内容について簡単に説明する。 |
ポイント2 | 誰が発言したか分かるよう、はじめに名乗ってから内容を話す。 |
ポイント3 | 資料をもとに会議を進行する際は、「下記の」「こちら」「図の」といった指示後は避け、視覚に頼ることなく口頭で説明する。 |
3 チェックシートを活⽤しよう
2014年10月、国際標準化機構(ISO)は「アクセシブルミーティング(みんなの会議)」の規格を国際規格として発行しました。
安全で円滑に会議を運営するために、支援機器の利用方法などについて規定されたのです。この規定に準ずることで、高齢者や障害のある方たちも会議に参加しやすくなりました。
アクセシブルミーティング実施に向けて、どのような配慮が必要か確認したいときは、チェックシートを活用すると安心です。
参加者の特性に応じ、「どのような配慮が必要か」の一覧が出力できるので、抜け漏れの確認に適しています。
詳しくは、共用品推進機構の「配慮事項検索ページ」をご覧ください。 |
4 検定試験に挑戦してみよう!
共生社会の実現に必要な基礎知識や考え方を問う試験「共⽣社会コミュニケーション検定試験」が、2021年10月からはじまります。
■検定試験の概要
・三答択一式(50問) ・100点満点中、70点以上の得点が目安 ・試験時間:1時間 ・受験料:4,950円(税込) ・試験参考書籍:「共生社会の教養」 |
※申込受付は9月を予定しており、詳細は後日、日本ホスピタリティ検定協会ホームページで発表されます。
試験では、「共生社会におけるコミュニケーションとは何か」を問われます。共生社会の一員となるための要素を、どれほど心得ているのか次の例題1〜2に挑戦してみましょう!
★例題1 共生社会におけるコミュニケーションに関し、適切なものはA〜Cのどれか。 (A)あらかじめ、障害のある人とはどういう人かを断定したうえで、コミュニケーションを行う。 (B)障害のある人のことを勝手に決めつけず、分からないことは本人に確認する。 (C)知識を詰め込むほど「知る」ことができるので、「考える」ことより優先した方がよい。 |
ヒント>>>
相手のことがわからなければ、コミュニケーションは成り立たなくなりがちです。コミュニケーションする相手に関して、分からないことは相手に聞くことが一番確実な解決方法になります。
例題1のこたえ:適切なのは(B)です。
★例題2 アクセシブルミーティングとして適切なものはD〜Fのどれか。 (D)障害のある人が参加できるようになっている会議 (E)障害のある人だけが参加する会議 (F)障害のある人が参加しやすいようにハード面(施設や機器等)のみが工夫されている会議 |
ヒント>>>
アクセシブルミーティングは障害の有無、年齢の高低などにかかわりなく、参加する人が会議の流れを理解でき、誰もが質疑応答できる会議をいいます。配慮・工夫はハード面だけではなく、人的面、各種情報等のソフト面も含まれます。
例題2のこたえ:適切なのは(D)です。
【関連ブログ 共生社会の教養シリーズ】
『共生社会の教養』その1:障害のある人が交通機関で嬉しかった出来事は?
『共⽣社会の教養』その2:会議のとき障害のある⼈に配慮する点は?(今読んでいる記事)
投稿者:白石果林 法政大学 現代福祉学部卒業。学校法人・一般企業にて8年間勤務したのち、フリーランスライターとして独立。福祉、資産運用、不動産、健康、エンタメなど、幅広い分野で取材・執筆を行う。 |
アクセシブルミーティングは、「共生社会の実現を可視化した縮図」です。社会のルールを決めるとき、高齢者や障害のある人を含めた、より多くの人が参加・議論しなければ意味がありません。
アクセシブルな会議と聞くと、ハードルが高いと思われがちです。しかしそれは、机上の空論(ニーズに合っていない配慮)である場合も。必要なのは、ちょっとした工夫や配慮です。まずは当事者のニーズを聞くこと。そこから始めてみましょう。