成田国際空港:世界トップレベルのユニバーサルデザインの取り組み
交通拠点の中でも特にユニバーサルデザインの考えが浸透しているのが空港。実は、世界における空港のバリアフリー評価でも日本の空港が上位を占めて(1位羽田、2位関空、3位成田)います。今年10月初旬、沖縄にて空港施設ユニバーサルデザインセミナーが開かれました。
公共の場でのユニバーサルデザインを考えていくうえで、参考になる点の多かった成田空港(成田国際空港)の取り組みをご紹介します。
障害を社会的に捉えること
成田空港は「障害の社会的モデル」の考えを根幹として建築デザインを設計されています。
例えば車椅子で移動する方が上の階へ移動できない時、医学モデルでは「車椅子だから上に行けない」という考え方でしたが、社会的モデルでは「エレベーターがないから行けない」という、社会側に課題があるとした捉え方になります。
東京オリパラを契機として2017年にUD推進委員を立ちあげた成田空港では、多くの方に安心して利用いただくため様々なサービスやツールを展開しています。
ユニバーサルデザインの取り組みの数々
1)カームダウンスペース
発達障害や知的障害、精神障害の特性のある方やそのご家族に積極的に空の旅に出られるよう設置されたスペース。音や光が苦手な方が中へ入ることで心を落ち着かせることができます。
2)空港予習冊子
成田空港利用の際の手順・行程を説明したパンフレットを配布。これは、想定外の事態が発生した際にパニックを起こしやすい(特に、発達障害や知的障害の特性のある)お子様とその家族に向けたものです。
3)コミュニケーション支援ボード
障害をお持ちの方、外国人の方にとって多く不安を感じるのが保安検査場。状況が理解できないまま指示を受けるため、トラブルの起きやすい場所でもありました。そのため、ピクトグラムで多くの方に「自分が何をすればいいのか」がわかりやすい支援ボードを用意しています。ブライトがデザインを担当しました。
4)ヘルプストラップ
外見では判断しづらい内部障害をお持ちの方を手助けできるよう、スタッフが一目でそういった方々を認識できるストラップを配布しています。東京都が配布しているヘルプカードと同じ役割を持ちながら、便の発着時間の記入欄などより空港に特化したデザインです。
他にも問い合わせシートや、ウェブサイトのアクセシビリティを向上させるなど様々な取り組みを行っています。ブライトでは障害当事者の方々と連携し、ヘルプストラップの設計、デザインを担当させていただきました。
大切なのは”ソフトとハードの連携”
中でも興味深かったのは、ご案内カウンターまでの誘導用ブロックの整理でした。
手当たり次第ブロックを配置するのではなく、分岐合流が極力少なくなるよう再設計。到着した後は人的支援があることで誘導用ブロックを省く、いうものです。
誘導用ブロックは視覚障害者の道筋となる一方で、その凹凸により他の利用者の転倒のきっかけになることもあります。ブロックで誘導し、スタッフがフォローする。ソフトとハードの連携が大切であるということを改めて認識しました。
「心のバリアフリーが大切である」「何事もプラスとプラスを足せばいいのではない」といった担当者のスピーチが印象的でした。
投稿者:南條 岳 株式会社ブライト 企画課課長 ユニバーサルデザインコーディネーター。 埼玉に生まれ、東京、大阪、福岡、京都、神奈川などで幼少期を過ごす。子ども写真スタジオでのカメラマンを経て2013年ブライトへ入社。外部でライター、イラストレーターとしても活動し、「わかりやすい編集」を得意とする。『高校生クイズ』が好き。 |
成田空港では感覚過敏などマスクを着用できない方々もいる中で、試験的に「扇子マスク」が導入されています(NHKニュースでも紹介されています)。透明な扇子で口元をカバーし、飛沫を防ぐ効果が見込まれます。