日本の視覚障害者は164万人、どうやって文字を読んでいるの?
2024年4月1日から、障害者差別解消法「合理的配慮の提供」が義務化されます。金融庁は、銀行や保険会社へ「障がい者等に配慮した取組み状況について」アンケート調査を行い、利便性向上に向けた取組みを推進しています。
●どうやって情報を得ているの?
私たちは、新聞、雑誌、テレビ、インターネットなど様々な媒体から情報を得ています。日本の視覚障害者は164万人と推定(日本眼科医2007年)されていますが、全盲や弱視(ロービジョン)の方は、どうやって情報を得ているのでしょうか?
主な5つの方法を紹介します。
1 点字 | 点の凸面を左から右へ触って読む | 内閣府や地方自治体などの広報誌に採用 |
2 大活字 | 14〜22ポイントの文字をルーペ等で読む | 国立国会図書館や全国の図書館サービス |
3 音声コード | コード(800文字)をスマホで読み上げる | マイナンバー通知、ねんきん定期便などに採用 |
4 スクリーンリーダー | パソコンやスマホの画面を読み上げるソフト | Windowsでは「PC-talker」「NVDA」「JAWS」、androidであれば「TalkBack」、MacやiPhoneでは「VoiceOver」などが主流 |
5 DAISY(デイジー) | CD-ROM媒体の他、amisやEasyReader等で読み上げる | 文部科学省が特別支援学校の音声教材として推奨、視覚障害者向けサピエ図書館で提供 |
1 点字
視覚障害の方が学校で習得する言語が点字なので、一番馴染みがあります。特に「重要事項は点字で読みたい」というニーズは根強くあるため、注意喚起や契約に関する情報は点字の提供ができるよう整備が必要です。
2 大活字
弱視の方はルーペを使って文字を読むことができるため、文字の拡大版が必要となります。光をまぶしいと感じる方は、白黒反転させた資料が読みやすくなります。最近では、視力の低下した高齢者向けにも活用が広がっています。
3 音声コード
行政からのお知らせや封筒に「音声コード」が印刷されているのはご存知ですか?このコードを無料アプリ「Uni-Voice」で読み取ると、スマホに文字情報が表示され、音声で聞くことができるのです。点字や大活字は健常者と違う冊子になりますが、「音声コードは健常者と同じ印刷物から聞くことができるので良い」と視覚障害者団体から要望があり導入が進んでいます。
4 スクリーンリーダー
視覚障害者のパソコン等の利用状況調査では、パソコン94%、携帯電話59%、スマホ53%、タブレット22%でした(電子情報通信学会2017年)。
全盲の方は「スクリーンリーダー」を使って、パソコンやスマホの画面を音声で聞き取ります。iPhoneの場合、設定メニューの中にアクセシビリティの項目があり、”VoiceOver”という音声読み上げアプリがあります。
参考:視覚障害者のスマホ活用方法、iPhoneでの読み上げ機能「VoiceOver」
弱視の方は、パソコンやスマホの画面を拡大したり、白黒反転させて画面の文字を読みます。
参考:弱視のウェブページ利用方法動画|総務省(8分)
5 DAISY(デイジー)
カセットテープに代わるデジタル録音図書で国際規格です。視覚障害者の他に、学習障害、知的障害、精神障害の方にとっても有効であることが国際的に認められています。日本では、学校図書に導入されたり、雑誌などの一般書籍がサピエ図書館で提供されていることから、視覚障害者には身近で馴染みのある図書がDAISYといえます。
●どのような配慮をすればよいの?
「障害者差別解消法」では、役所や事業者に対して、障害のある人から、何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応することを求めています。
事例1:点字、点図、大活字、白黒反転資料
点字はA4サイズ1頁に30マス×24行程度の平仮名が入ります。点字や大活字の資料は小ロット対応できるため、必要な数量のみを制作することが可能です。
点字・点図付きの卓上カレンダー/ブライト
大活字・白黒反転の診療案内/国立障害者リハビリテーション病院
事例2:音声コード付きパンフレット
音声コードは、全盲の方が触ってコードの位置が分かるよう「切り欠き」を付けるルールがあります。表面だけにコードがある場合には、切り欠き1個、両面にコードがある場合には切り欠き2個の加工が必要です。
事例3:読み上げテキスト
WEBへ印刷物を掲載する場合は、PDF形式が一般的ですが、図表やイラストが入るPDFは読み上げが機能しません。その代わりとなるのが「読み上げテキスト」です。読み上げ以外にも、点字や大活字へも活用できるため、最も汎用性の高い形式です。ただし、印刷物PDFからそのままコピペするのではなく、「音声で聞いて内容が理解できるよう」音訳が必要となります。
事例4:Webアクセシビリティ
前述したように、多くの視覚障害者がWebから情報を得ています。しかし「キーボードで操作できない」「図版を読み上げない」など不十分なWebが存在します。そこでJIS X 8341-3:2016(高齢者・障害者等配慮設計指針)で診断することで、アクセスしやすいWebに改善することができるのです。
WEBアクセシビリティ診断/証券・金融商品あっせん相談センター
事例5:マルチメディアDAISY
目次から読みたい章や節、任意のページに飛ぶことができるため、頁数が多い冊子に適しています。また、多言語展開が可能なので、国際的に情報提供が必要な場合に効果的な手法です。
ちなみに『Tokyo 2020 アクセシビリティ・ガイドライン』では、「視覚に障害のある人(全盲の人、弱視(ロービジョン)の人など)には、点字や音声データ、触知地図、明瞭なコントラストと案内表示、拡大印刷、印刷情報の代替形式での提供、反射の少ない素材などが必要である」と規程されています。
本記事は、視覚障害者についてですが、ブライトでは、聞こえない人、聞こえにくい人にアンケートを実施しました。
詳しくは、UDレポート「聞こえにくいと感じる人は1,400万人以上、電話を使わずどうやって問い合わせるの?」をご参照ください。
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投稿者:南條 岳 株式会社ブライト 企画課課長 ユニバーサルデザインコーディネーター。 埼玉に生まれ、東京、大阪、福岡、京都、神奈川などで幼少期を過ごす。子ども写真スタジオでのカメラマンを経て2013年ブライトへ入社。外部でライター、イラストレーターとしても活動し、「わかりやすい編集」を得意とする。『高校生クイズ』が好き。 |
情報の約8割は「視覚から」得ていると言われているため、ブライトでは視覚に障害がある方でも必要な情報が入手できるよう、情報保障を強化しています。また、制作過程で障害者からの要望を聞くなど協同制作することで、障害者の就労支援にもつながっています。